ACJ について

ACJ について

Naoko Mikami

アート・キュレーター・ジャパン と日本のアート

アート・キュレーター・ジャパン (ACJ)は、 日本のアート を世界に紹介すべく、日本人キュレーター三上尚子によって、2016年に開設された。三上は、短歌の歌人であった祖母の強い影響を受け、日本大学において日本文学を専攻。万葉集、古事記、源氏物語といった古典文学の研究に情熱を注いだ。それら古典文学を背景とした日本の伝統文化およびモダンアートへの深い関心が、アート・キュレーター・ジャパンの設立のきっかけとなっている。

アート・キュレーター・ジャパン は、日本人アーティストおよび日本文化の影響を受けた、或いは日本のアートシーンに興味のある外国人アーティストをより多くの観客に紹介している。我々は、インスタグラムやフェイスブックなど複数のデジタルプラットフォームを使い、作品や記事、インタビューをバイリンガル(日本語と英語)で掲載している。

なぜ アート・キュレーター・ジャパン なのか?

アート・キュレーター・ジャパン

日本人はコンテンポラリーアートに対し、受け入れる態勢が十分に整っていないと感じる。その原因は明らかに日本の教育にある。西欧諸国と違い、日本政府は芸術、特にコンテンポラリーアートの振興・発展に注力して来なかった。文部科学省も、芸術教育における堅実な教育方針を示して来なかった結果、一般的な日本人には、コンテンポラリーアートの文脈やコンテンツを理解する素地が備わっていないのである。

こうした状況は、日本人アーティストにも少なからず影響を与えていると言える。西欧人アーティストと違い、日本人アーティストたちは、自身の作品コンセプトを、口頭ではもとより、文章になったステイトメントにおいてさえ、十分に説明する技量に欠けていることが多々ある。それを英語でしなければならない場合、状況は更に悪くなる。

こうした状況を踏まえ、アート・キュレーター・ジャパン は、日本人アーティストを世界と結びつける一助になりたいと考えている。彼らの作品をウェブに掲載し、プロフィールやステイトメントを作り上げ、翻訳するサービスを提供している。

また一方で、 アート・キュレーター・ジャパン は、日本での活動を模索する外国人アーティストのために、ステイトメントの日本語への翻訳や、ギャラリーの紹介などを通して手助けをして行きたいと考えている。ACJでは現在、ほぼ毎日世界各地のアーティストから問い合わせをいただいている。ジャンルを問わず多様なアートを目にすることは、私たちの喜びであり、ACJを運営する原動力になっている。

Masato Shigemori

日本人の感性

一般的に、日本人には繊細な美的センスが備わっていると言われている。万葉の昔から、雪月花などの自然や、惜別の情、人を恋する心といった森羅万象を繊細な表現を尽くして描写してきた。『万葉集』には、実に多様な人間の営み、自然との関わりが鮮やかに描かれているのだ。

科学では「共感覚」を次のように定義する。「ある音を聞いた時、その音の色が見えるというように、五感の一つ刺激が、別の五感の感覚を生じさせる」。この共感覚の現象が、日本人の感性に現れていると言えよう。

・歌舞伎では雪が深深と降る様が低い太鼓の音で表される。実際雪が降るのに音はしないのだが、太鼓の音があることにより、静寂の中に雪が淡々と降っている情景が鮮やかに表現される。

・共感覚は、日本のアート、伝統文化や日常生活に深く浸透している。風鈴を例に挙げると、日本人は暑い夏の日、風に揺られて鳴る風鈴の音によって涼しさを感じる。着物の柄や漆器など、その他の伝統工芸も、そうした五感を刺激することを目的に製作されてきたのだろう。

現代の日本人アーティストたちも確かにこの流れを踏襲しつつ、新たな挑戦・パラダイムの中で、探求を続けている。

今日における日本のアート

日本のアートは様々な意味において矛盾を含んでいる。ミニマリスト的でありながら非常に詳細にわたる表現をする。伝統と現代のサブカルチャーの間の対立もある。日本人アーティストやギャラリーは海外での活躍を望んでいるが、外国人に対しては閉鎖的なところもある。

よく指摘されることだが、海外に対する発信力の低さは、常に日本のウィークポイントであり続けている。西欧流の考え方に基づく海外マーケットでビジネスをするために、日本人アーティストは西洋的価値観を踏まえて上で臨まなければならない。自分の作品とそのコンセプトを理論的に語り、海外のアーティストたちと芸術的·哲学的な関わりを持っていくことが、日本のアートをより大きな市場に浸透させていくことの鍵となるであろう。

日本には数多の素晴らしいアーティストがいることは疑いの余地がないが、海外進出の困難さは想像に易く、また驚くべきことだが、国内ですらその存在を知られていないことがままある。世界に影響力のある日本人現代アーティストはそれほど多くないのが現状である。代表的な面々として、草間彌生村上隆奈良美智らを挙げる人も多いだろう。また、写真家の荒木は、日本文化の暗い一面である「縛り」を普及させた。一方、戦後の代表的な美術ムーヴメントである具体を結成し牽引した吉原治良は、多くの西欧のパフォーマンスアーティストに影響を与えた功績が知られている。

Art Curator Japan「アートは世界共通の言語である」とはよく言われるが、本当にそうだろうか。作品の意味、裏に込められた理由、文化的背景は、時間と場所により異なるはずだ。文化的相違が、作品に対する理解を損ねる可能性もある。同じ文化圏であっても、アーティストと観客の出身地が違えば、作品の解釈に誤解が生じることもある。世界的に、教育と知識が、アートを理解する上で重要になることは言うまでもない。

アート·キュレーター·ジャパンは、様々なプロジェクトを通じて、日本のアートが海外でより広く理解され、日本人アーティストと外国人アーティストが活発に意見を交わし、それが将来新たな芸術的流れを作っていく土壌となることを心より願っている。